相子智恵
活字組み替へ木枯となりにけり 矢野孝久
句集『風の断面』(2013.6 私家版)より。
一読、〈活字〉〈組み替へ〉〈木枯〉〈けり〉のK音が響く。この硬い音が、活版印刷の活字の、鉛版の金属の冷たさと、木枯の冷たさという句の内容を強く印象付けているように思った。
〈活字組み替へ〉〈木枯となりにけり〉という全く関係の無い二物の取り合わせも詩的に響き合っていて、全体を貫く硬い音の響きとあいまって、寒く、凛とした冬の世界を形成している。また冷たさの中に、どこか懐かしさもある。解説の付けようがない句であるが、美しく印象深くて惹かれた。
つい最近、活字拾いのボランティアの記事(
http://www.1101.com/watch/2013-11-07.html)を読んだ。全く関係ないが、そのことも思い出された。
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句評、ありがとうございました。
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