関悦史
かぶさりくる冬の星星豚生る 玉田憲子
大いなる自然の流れのなかで、星々のきらめきに祝福されての生誕というには、「かぶさりくる」の重量感はあまりにも不穏だ。「冬の星星」であることも冷厳さの印象を強める。
この豚は育った後で食われてしまうのかもしれないが、しかしこの句の冷厳さは、そうした陳腐な情緒とは明確に一線を画している。
一句は生命誕生の神秘と末路の悲惨さの両方にまたがりつつ非情な肯定を下し、豚の誕生を荘厳する。
豚は詠み手の自己投影や自己憐憫では全くないが、かといって他人事として同情が寄せられているわけでもない。
豚と詠み手は厳然と違いつつ、同じ立場を分有してもいるのである。その認識が、情を述べないこの句の背骨を成す。
句集『chalaza(カラザ)』(2013.8 金雀枝舎)所収。
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