相子智恵
赤松のうろこ乾びて流行風邪 長嶺千晶
-blog 俳句空間-戦後俳句を読む「
平成二十五年 冬興帖 第四」(2013.11.22更新)より
〈赤松のうろこ〉とは、うろこ状にひび割れた赤松の樹皮のことだろう。赤くひび割れ、ぽろぽろと乾いてはがれたりもする赤松の樹皮と〈流行風邪〉との、不思議とアンニュイな取り合わせに眼が留まった。
流行風邪に罹患した人が赤松のある場所を歩いているのか、流行風邪に臥せっている窓からぼんやりと赤松を眺めているのか、状況は見えてこないものの、赤松の赤くカサカサとひび割れた樹皮と、鼻や喉の粘膜が荒れ、咳やくしゃみと一緒に、体から水分が抜け出ていってしまうような〈流行風邪〉の様子とが、遠いところで妙に響き合っている。乾燥した冬の空気も感じられてくる、良い意味でヘンな取り合わせである。
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