相子智恵
花筏十字に卍そして渦 大関靖博
現代俳句文庫72『大関靖博句集』(2012.12 ふらんす堂)より。
水面に散った桜の花びらが集まり、渦巻く水に合わせて〈花筏〉の形が変化していく。最初は十字に見えていたものが卍となり、やがて渦となった。花筏の形によって渦巻く水の流れがよく見えてくるのが面白い。その景の移り変わりが主眼であろう。
と同時にもう一つ。十字からはキリスト教、卍からは仏教が思われて、それらが最終的に混沌とした渦となっていくのも、この文字によって得られる面白さだ。実景の側面と言葉の側面の両方からのアプローチがある句。そこに狙いがあるのか、あるいはこちらの深読みなのかはわからないが、その両面からのアプローチが不思議な味わいを生んでいるように思う。散った花びらである花筏が、死と再生のようなものを感じさせるからだろうか。
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