相子智恵
二の腕に山気のふるる更衣 若井新一
句集『雪形』(2014.3 角川学芸出版)より。
夏物に着替える〈更衣〉。半袖のシャツに着替えた二の腕に、山中のひんやりとした空気が触れた。夏が訪れたとはいえ、清浄で寒いくらいの山の空気に触れて身が引き締まる。
生活に根差した〈更衣〉という季語から、作者は旅行などで山を訪れたわけではなく、ずっと山深い地域に住んでいるのだということが自然とわかってくる。山とともにある生活なのだろう。〈山気〉には山への敬意や畏怖も感じられる。裸の頼りない二の腕を包む〈山気〉。何か大きなものの中で小さな自分が生かされているという感覚があるように思った。
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