樋口由紀子
ドキドキしながら電池を捨てにゆく
湊圭史 (みなと・けいじ) 1973~
油断するとゴミはすぐに増える。分別がややこしいく、何でもどこにでも気軽には捨てられなくなった。ゴミを捨てるのがこんなに面倒だったかなと思う。電池は規定の電池ボックスに入れて捨てる。ドキドキなんて本来はしないはずである。
しかし、電池は他のものと違って、捨てるときにドキドキするのがなんとなくわかるような気もする。電池は不思議である。あんなに小さいのに大きなものだって動かす。止まっているものを生き返らせる。電池がなければ何の役にも立たないものがわんさとある。
「ドキドキ」のカタカナ表記が電池の心臓の音のように聞こえる。残量が残っているのに捨てられた電池はとんでもないものを動かしてしまうかもしれない。「川柳カード」5号(2014年刊)収録。
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