樋口由紀子
転がったとこに住みつく石一つ
大石鶴子 (おおいし・つるこ) 1907~1999
石は自分で自分の居場所を決められない。自ら動いたり、選んだりすることもできない。何かの作用で転がったところにいるしかない。
人は自分の意志で行動し、選択することができる。が、本当にそうだろうか。どこに生まれ落ちるのか、身体も精神もどのような状態になっているのか。自分で決めたわけではない。人は自由に生きているようで、生まれ出たところで、つまりは転がったところで、石のように自然にたくましく生きていくしかない。理屈っぽいが納得できる。
大石鶴子は井上剣花坊、井上信子の次女。信子亡き後は「川柳人」の発行に尽力した。掲句は昭和52年3月東京で開催された第一回全日本川柳大会の大賞受賞作品。
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