2014年7月18日金曜日

●金曜日の川柳〔河柳雨吉〕樋口由紀子



樋口由紀子






ギヤマンの切子(きりこ)に映る午下(ひるさが)

河柳雨吉 (かわやなぎ・あめきち) 1902~1971

なんと華やかで美しい川柳であろうか。このような句が昭和の初めに書かれていた。ギヤマンの切子にくらくらする。鍋や薬缶に映る私のひるさがりとは別物のようなである。

ギヤマンの切子の形状をそのまま述べるのではなく、午下りを映すことによって、その存在をより印象的なものにしている。まして、午下り。抽象的で、やけに明るく、それでいてなんともけだるい。現実の事象ではない。カットグラスのキラキラの繊細さと鋭利さが、日常を離れた別の世界に誘う。ギヤマンの切子に映った世界を作者は受けとめる。

河柳雨吉は東京神田の生まれ、浴衣地商で句会には白足袋をかかさないお洒落な人だったらしい。〈台所更けて柄杓の沈む音〉

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