2014年7月25日金曜日

●金曜日の川柳〔伊古田伊太古〕樋口由紀子



樋口由紀子






炎天に出てみてみみずそれっきり

伊古田伊太古

「梅雨明け十日」とはうまく言ったものである。梅雨明け宣言があってから、暑さは半端ではない。こんな日はむやみに外に出ると熱中症になってしまう。できることなら、屋内でじっとしているのにかぎる。

みみずならなおさらである。この猛暑に出てきたら、そりゃあ、だめでしょう。みみずは土の中に居てこその生き物である。でも、土の中からは外は眩しく輝いて見えるのだろう。一度は外を見てみたいと憧れるのは至極当然のことだろう。しかし、出てみて、「それっきり」になった。

「それっきり」がなんとも効いている。情け容赦ない言葉だが、笑ったあとでしんみりする。干乾びたみみずを見て、土の中でおとなしくしていたら、こんな姿にならなくて済んだのにと思ったのだろう。みみずを詠んでいるが、人間も私自身にもあてはまる。『川柳新書』(昭和31年刊)所収。

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