樋口由紀子
炎天に出てみてみみずそれっきり
伊古田伊太古
「梅雨明け十日」とはうまく言ったものである。梅雨明け宣言があってから、暑さは半端ではない。こんな日はむやみに外に出ると熱中症になってしまう。できることなら、屋内でじっとしているのにかぎる。
みみずならなおさらである。この猛暑に出てきたら、そりゃあ、だめでしょう。みみずは土の中に居てこその生き物である。でも、土の中からは外は眩しく輝いて見えるのだろう。一度は外を見てみたいと憧れるのは至極当然のことだろう。しかし、出てみて、「それっきり」になった。
「それっきり」がなんとも効いている。情け容赦ない言葉だが、笑ったあとでしんみりする。干乾びたみみずを見て、土の中でおとなしくしていたら、こんな姿にならなくて済んだのにと思ったのだろう。みみずを詠んでいるが、人間も私自身にもあてはまる。『川柳新書』(昭和31年刊)所収。
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