2014年7月7日月曜日

●月曜日の一句〔仁平 勝〕相子智恵



相子智恵







先生のゐない銀座の夏柳  仁平 勝

『仁平勝句集』(2014.6 ふらんす堂)より。

先生の不在を心細く思っている主体の年齢は、先生を持ったことのあるどの年代でも、たとえば現在学校に通う学生でもいいのであるが、〈銀座の夏柳〉の大人の感じからすれば、やはりこれは大人の句であろう。

大人が、自分よりも年長の先生の不在を寂しがっている。この先生は亡くなったのではないかと思われてくる。〈銀座の夏柳〉は風に揺れて涼を誘うが、ここではそのふらふらと揺れる柳の姿が、先生というどっしりとした支えを失った自分と重なってきて、なんとも心もとない。

また、銀座という土地をわざわざ読み込んでいるからには、この先生が銀座を愛した粋な人だったのではないかと、その人物像まで見えてくるような気がする。この先生と銀座で飲んだこともあったのだろう。粋でさらりとした大人の句で、だからこそ〈先生のゐない〉の、ふと出た子供っぽい直接的な言葉が胸にしみるのである。

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