相子智恵
闇を押し闇を招きて踊の手 泉田秋硯
自注現代俳句シリーズ・八期9『泉田秋硯集』(1996.12 社団法人俳人協会)より。
盆踊は手を押し出したり、引いたり、打ったりする所作で進んでゆくが、その動きを〈闇を押し闇を招きて〉と表現した。それによって盆踊の夜の暗闇が踊る手の先にくっきりと描かれたばかりではなく、自らがその闇を押したり、呼び寄せたりしているという、闇との積極的な関わりが出てくる。もっと踏み込んで言えば、呪術性を帯びてくるのである。
盆踊は念仏踊が起源であり、もともとは盆に迎えた霊を供養し、かの世へ送り返すためのものだった。掲句はその本意に通じる不思議な世界が生まれている。
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