樋口由紀子
三点差あるからパンツ穿き替える
本間かもせり (ほんま・かもせり)
野球かサッカーをテレビで観ているのだろう。贔屓のチームが三点差で勝っている。たぶん、このままでだいじょうぶ、今日は勝てる。テレビにかじりついていたが、三点差でやっと余裕が出てきた。
ズボンであっても下着であっても、「パンツ」にインパクトがある。テレビを凝視しながらのその姿を想像して、笑ってしまう。熱狂的なファン心理の可笑しさ、可愛さ。
私の父は大のトラキチだった。試合に勝っていると、必ず夕涼みに出掛ける。観ると逆転されると言うのだ。どきどきしてよう見ておれないのだ。おそるおそる帰ってきて、どうだったと玄関の戸を開けて聞く。勝った日は嬉しそうにスポーツニュースを夜遅くまではしごしていた。
〈数学が苦手で鳥になりました〉〈アマゾンで探すバールのようなもの〉 「川柳カード」6号(2014年7月刊)収録。
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