樋口由紀子
おや降って来ました迄の立話
山本半竹 (やまもと・はんちく)
偶然に会って、「久しぶりですね」と、世間話などをする。近況を聞いたり聞かれたりしているとぱらぱらと雨が降ってきた。「雲行きがあやしいですな」「本降りにならないうちに帰りましょうか」「では、また」となったのだろう。
日常のひとコマを切りとって、人と人との関係性や立話の輪郭をうまく捉えている。立話は気のおけない雑談であり、膝を突き合わせて話すような深刻な話はしない。軽みの川柳であり、シンプルなよさが出ている。古川柳に<本降りになって出てゆく雨宿り>がある。
〈君と僕 俺と貴様になって酔い〉〈これで子があるとは見えぬ乗馬服〉〈汽車ゴッコやめれば暗くなってゐる〉 句集『はんちく』(1977年刊 『はんちく』刊行会)
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