相子智恵
言葉待つ耳こそばゆし花芒 兼城 雄
「27歳」(
俳句ウェブマガジン「スピカ」/2014.9.9更新)より
普段、ただ漫然と言葉を聞いているときには耳を意識しないから、次の言葉を集中して待っているという、無言の時間がやや長く続いている様子が想像される。大切な言葉を早く聞きたいような、聞きたくないような、くすぐったく、じれったい時間。
この耳はいったいどんな言葉を待っているのだろう。辺り一面銀色のキラキラとした〈花芒〉が風になびく中で、耳が待っている言葉への期待感が〈こそばゆし〉に表れていて、この句自体がキラキラとした青春の甘さと切なさを感じさせる。
思い自体を吐露してしまうのではなく、耳がくすぐったいという状態と季語に託して淡々と抑えたことで、かえって印象的な青春詠となった。
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