樋口由紀子
まだ言えないが蛍の宿はつきとめた
八木千代 (やぎ・ちよ) 1924~
生活していく中で、「まだ言えない」「今は言えない」ことがわりとたくさんある。「つきとめた」のだから、やっとわかったのだ。そう簡単にわかることではないことがようやく判明した。しかし、「まだ言えない」。それも「蛍の宿」であるから、かなり意味深である。しかし、感情に流されるのではなく、理知的に判断している。
どういういきさつがあったのだろうか。つきとめようの思ったときから言わないでおこうと決めたときまでの時間の経緯、心の変遷。動詞がうまく機能している。少々複雑な内実がありそうだが、情念に流されることなく、客観的に見る冷静さ、心の動揺をうまくまとめている。『椿守』(葉文館出版 1999年刊)
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