樋口由紀子
無理やりに割り込むおばちゃんがいて満月
徳山泰子 (とくやま・やすこ) 1948~
やっと前の席が空きそう。今日は仕事で疲れていたので立っているのがしんどい。前に座っている人が次の駅で降りてほしいとずっと願っていた。やっと座れる。がーん、おばちゃんが割り込んできた。わあっ~最悪。でも、しかたない。あきらめて、おばちゃんの頭越しに窓の外を見たら、満月。今日は満月だったのか。なんか、得をした気分。満月って、ほんとにかっこいい。
割り込んでくるおばちゃんがいるのもこの世、満月が見えるのもこの世。満月も現実だけれど、どこか現実離れしている。何事が起こっても、何事もなかったように、悠々として満月はある。生きていくには満月のようにはなかなかいかない。でも、満月を見ていると、心が落ち着く。おばちゃんも疲れていたのだ。そういえば、おばちゃんのお尻も満月もまんまる。さあ、早く家に帰ってお風呂に入ろう。「浪速の芭蕉祭」(2014年刊 鷽の会)収録。
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今夜は閏9月の十五夜とか。
返信削除この時にこの1句とは。
なかなか素敵なタイミングですね。