2015年5月16日土曜日

【みみず・ぶっくす 22】 バナナ茶館 小津夜景

【みみず・ぶっくす 22】 
バナナ茶館

小津夜景



   みみず・ぶっくす22
バナナ茶館   小津夜景



         は、怪しさ満点の茶館である。

           勿論、茶館には怪しさがつきものだ。朝から
           晩まで張り付いている客が必ずいるし、時折
           漏れ聞こえる会話の断片が妙に黒話めいてド
           キドキもする。私はソッチ方面に頭がイカれ
           ているので「ホンモノの黒話を耳にしたい…」
           と、目にする茶館という茶館を手当たり次第
           つぶして回っていた時期もあった。うっかり
           全く流行っていない、ヤバめの(といっても
           その「ヤバさ」が本来なのだが)茶館に入っ
           てしまった時などは「どうして潰れないの? 
           やっぱり、売薬?」と緊張しつつ、それでも
           半時間弱くらいは頑張る。館の猫と戯れつつ、
           耐える。

           茶館とかならずセットである(べき)アイテ
           ムは、壁一面を覆う薬種商風の抽出と、よく
           客慣れした猫だと思う(経験は語る)。店の
           主人が抽出を開け閉めしているのを見ると夢
           が広がるし、猫がいると飽きる事がない。な
           にもしない、愉しい時間。南仏で発見したバ
           ナナ茶館はそのどちらも備えていて良かった。
           また行きたい(そしていつか黒話も)。


バナナの葉凄き異国の茶館な

漆門放てば白き薄荷か

シニフィアン茂りて遠き(あららぎ)

はつなつの光に殖ゆる非人

肉球押すうつかり発語(パロル)たらんとし

まひまひの剝き身うましや(かをりぐさ)

睡蓮よ眸はかつてやはらか

空蟬を炒めてあはれ昼の

木天蓼の花をゆらして眠らむ

(ミャオ)族に信心はなし鯉屋敷

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