樋口由紀子
隣りの花が隣の花と見える齢
上野田笹滴
「隣の芝生は青い」という諺を下敷きにしているのだろう。他人のものは何でもよく見えた時期が確かにあった。子ども頃「よそはよそ、うちはうち」と何かを買ってほしいとき、どこかに連れて行ってほしいときなど母親に言われたことを思い出した。そういう母もよそと比べているところもあった。母もまだ若かったのだ。
歳をとったなと思う。性格も嗜好も若い頃と随分変わってきた。大人になったというのとはまた違う。左右される感度が鈍ってきたというか、体力的に距離をおいてしか物事を見られないというか、だからどうでもいいことが増えてきているように思う。それが歳をとるということなのかもしれない。掲句は「歳」を上手く言いとめている。「創」収録。
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