樋口由紀子
たんぽぽを木より大きく描いて寝る
山田純 (やまだ・じゅん)
たんぽぽは木より小さい。現実の風景とは明らかに異なる。それをあえて「大きく描いて寝る」と詠む。心象風景だろうか。ただ描いて寝るだけだから、なんの問題もない。では、なぜそういうことを行うのか。それは描くことで失いそうなる自分自身を取り戻すことができるからだろう。
事実ではない、現実ではないことをわざわざ一句に書くことで自分の思いを守ろうとした。どうってことないようだが、それはとても大切なことで、作者の世界観が見える。
たんぽぽは全世界に分布している。黄色の頭状の花は可憐で、いくら見ても飽きない。冠毛は白色で風に舞う。たんぽぽに憧れや敬虔な気持ちを持っているのかもしれない。「川柳展望」40号(1985年刊)収録。
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