相子智恵
毛虫焼く炎一枝に絡みけり 涼野海音
「俳句」2015年8月号・精鋭10句競詠「星祭」(2015.8 角川文化振興財団)より
害虫である毛虫を焼き殺して樹木を守る。夏の季語である。
毛虫のついた枝ごと伐って振り落とし、焼いているのだろうか。毛虫を焼いた炎が一枝に絡んでいるということは、焼かれつつある毛虫が炎を上げ、身悶えしながら必死に一枝に絡みついているということなのだろう。毛虫が焼かれていくさまを透徹した冷静さで描き、確かな一句となっている。
「星祭」と題された10句は他に、〈海峡のひかりに開く落し文〉〈海の日の望遠鏡を拭いてをり〉〈時計屋の二階の灯る星祭〉など、総じてロマンティックな味わいの、穏やかな時間や美しい光が描かれた句が多い。その中で掲句だけは抜き差しならない瞬間が描かれているのであるが、一枝に絡む炎を見つめる目は耽美的でもある。毛虫が焼かれる炎の紅色と、夏の木の一枝の濃緑との対比が美しいのである。
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