樋口由紀子
くるぶしにタバスコを振る夏だった
中川東子
どんな夏だった?と聞かれて、こう答えたら、不思議がられるだろうが、かっこいい。でも、内実は相当痛いはずである。いろんな夏があるがこんな夏はまあない。鋭敏な自己把握である。
くるぶしの不安な白、タバスコの刺激的な赤の対比。タバスコは辛味の強いソースである。そうするしかなかったのだろう。もちろん心象風景。それでもきりりとしない、引き締まらない、食えない私だった。理屈では片づかないものを理屈には合わない行動で推し量っている。身体性の川柳。掲句は「くるぶし」だが、中村冨二は「全身」だった。〈みんな去って 全身に降る味の素 冨二〉
〈新人類九十代を調査する〉〈行き止まれば影を立たせる白壁だ〉 「川柳カード」9号(2015年7月刊)収録。
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