樋口由紀子
わが家の前で見なおすいい月夜
三次
9月27日は中秋の名月である。この句は実感できる。都会から帰って、やっとこさ田舎のわが家に辿り着き、あらためて夜空を見上げてみると、まるで出迎えてくれているように月が煌々と光っている。
都会でも月の明らかな夜で、月をちらっと見たような気がするけれど、わが家の前で見る月は格別で、どこで見た月よりもきれいで輝いている。月をさえぎる高い建物もネオンもなく、環境的にも月を愛でるのに恵まれている。
無事に一日が終わった。「今日はお疲れさま」「遅くなりましたね」と言ってくれているようで、帰り着いた安堵感と無理をしていた肩の力が抜けていく。「見なおす」に川柳の味わいがあるように思う。『番傘川柳一万句集』(1963年刊)所収。
●
0 件のコメント:
コメントを投稿