樋口由紀子
笑うしかないところまで行ってみる
小梶忠雄 (こかじ・ただお)
「笑うしかないところ」って、一体何処で、どんなところだ。わかるようでわからない。輪郭がありそうでいてぼんやりとしている。だから余計に気になる。けれども、具体的な説明はなにもなく、手がかりは一切書かれていない。だから一句の前から動けなくなり、立ち止まり続ける。この連れて行き方が巧者である。
「笑う」というのは「怒る」や「泣く」と比べて、いろんな意味を含んでいるフクザツさがある。広辞苑をひくと「うれしさ、おかしさ、楽しさ、照れくささ、軽蔑などの表現として」とあった。
平易な語句を選択しているが、平易な世界を描こうとはしていない。この世には言葉ではうまく言えない、説明できない諸々があるのだ。案外、「笑うしかところ」は外にあるのではなく、作者の内にあるのかもしれない。「川柳びわこ」(2009年刊)収録。
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