樋口由紀子
ボクのきらひな角度からのぞかれる
中呂
生きていくなかでコアな部分に触れる川柳である。「きらひな角度」にどきりとした。きらひな角度って、確かに「ある」と思った。どの角度かと聞かれてもうまく答えられないが、そういう角度は人それぞれにあって、その角度からのぞかれると否応なく消耗してしまう。私だって、そういうことを誰かにしているかもしれない。
「ボクの」「きらひな」の表記に工夫がある。〈僕の嫌いな角度から覗かれる〉とは別の様態になる。やわらかい物言いだが痛いところを突いている。格言的にならずに、とぼけた味を出しながら大切なことをさりげなく教えてくれている。経験した身体がそう思ったのだろう。「川柳研究」第74号(1955年刊)収録。
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