樋口由紀子
フリスビーのうまい塗装工見習い
酒井かがり (さかい・かがり) 1958~
お昼休みにフリスビーをしているのだろう。塗装工見習いのフリスビーがうまい。身体の動きが機敏でシャープで、目は輝き、楽しそうでいきいきとしている。仕事をしている時とはまるで別人のようである。人はそれぞれ得手不得手があり、誰でもプラス面とマイナス面があり、意外な一面をもっている。
そんな日常のひとこまを川柳にした。フリスビーは予想もつかないスピードや曲り方をする。それを器用に操る彼に作者は感情移入している。しかし、そこを切り取っているだけで、それを見て、どう思ったのか、だからどうだということは一切書かれていない。だからこそ、作者の立ち位置と眼差しを感じる。フリスビーがうまい彼はきっと一人前の塗装工になるだろう。「ふらすこてん」(2016年刊)収録。
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