樋口由紀子
一月一日ああそうかいと足の裏
水瀬片貝 (みなせ・かたがい) 1923~1993
一年のはじまりである。今年こそはと心身ともに引き締めまり、それなりの心構えになる。なのに、その思いを込めて、今日は一月一日であると全身に告げると、足の裏は「ああそうかい」と素っ気ない返事。昨日となんら変わりないのにとさも言いたそうである。
でも、そうかもしれない。出鼻をくじかれた感はあるが、それくらいに思っている方がちょうどいい。やけに張り切ったり、すぐに調子に乗ってしまう私をそんな心持ちで足の裏が支えてくれている。だから、大きな火傷も怪我もせずに無事にやってこれているのだ。
妙味を知る川柳である。〈評判はいかかでしたか僕の死後〉〈病床記まだ笑えるぞ笑えるぞ〉
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