樋口由紀子
カミサマはヤマダジツコと名乗られた
江口ちかる (えぐち・ちかる)
「ふらすこてん」新年句会での兼題「神」の一句。一読して度胆を抜かれた。「川柳で大嘘を書きたい」と言ったのは石部明だが、掲句も見事な大嘘である。どこで出会ったのか、いつ言ったのか、カミサマは日本人だったのか、女性だったのか。突っ込みどころはいくらでもある。決してそういうことはないとわかっていても、この大嘘にのっかかって、一緒に納得し、一緒におもしろがりたいと思った。
「ヤマダジツコ」が絶妙で曲者。ありそうでなさそうな、リアリティのぎりぎりの巧みな名前設定である。そして、「かみさま」でも「神さま」でも「神様」でもなくカタカナの「カミサマ」。何の根拠もなく、理由もないが、唐突さに、不思議に説得力があった。
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