樋口由紀子
紙の雪ふらせ一族鳥になる
飯尾麻佐子 (いいお・まさこ) 1926~2015
紙の雪を降ってきてクライマックスになり、そして幕が下りた芝居を観たことがあった。内容はよく覚えていないがそのシーンだけが妙に印象に残っている。確か、観客は誰もが泣いていたと思う。
「紙の雪ふらせ」だから自らの意志で、「一族」は自分も含めて、「鳥になる」だから自らの行動だろう。ここではないどこかへ、今とは違う世界に飛び立ち、鳥になって飛翔する。多少芝居がかってはいるが、新たな決意と覚悟の程をうかがわせる。飯尾麻佐子が確かにそこに立っていると思わせるものがある。
飯尾麻佐子が昨年に亡くなっていたことを知った。彼女は1978年女性だけの川柳誌「魚」を創刊し、多くの女性川柳人を育てた。私も川柳の駆け出しの頃に何度もエールを送っていただいた。〈鏡屋の夜 神さまは鈴なりに〉〈日がな一日 喉の裂けたる裔のうた〉〈軋む五十音 宙にブリキの陽が昇る〉 「魚」62号(1995年刊)収録。
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