相子智恵
みちのくや炎と遊ぶごと畦を焼き 藤木倶子
句集『無礙の空』(2016.02 東奥日報社)より
〈みちのくや〉の古語の地名が効いていて、一気に句の世界が大きくなっている。
〈炎と遊ぶごと畦を焼き〉だけだと、炎の大きさは小さく感じられるのだが、そこに〈みちのくや〉と置かれたことで、炎が大きく、その大きな炎と戯れるように豪快に畦を焼く様子が目に浮かんでくるのだ。青森ねぶたの力強い武者絵の赤色のような、豪快な炎の色。
永田耕衣の〈舐めにくる野火舐め返す童かな〉にも似たプリミティブな楽しさと怖さがあり、原始から火に対して人間が抱いてきた感情がそのまま、現代に生きているような句である。
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