相子智恵
揺れ戻す首のちからや白牡丹 須原和男
句集『五風十雨』(2016.05 ふらんす堂)より
牡丹は「花の王」ともいわれる大きくて豪華な花だ。花の華麗な美しさに目が行きがちであるが、掲句は白牡丹の花を支える茎の強さ、しなやかさを詠んでいて発見がある。
風に揺れたのだろう。ぐいっと花が揺れ戻したところに首の力強さを見た。それと同時に、大きく重い花は揺れ戻す反動も大きいので、言外に牡丹の花の大きさ、重さが確かに感じられてくるのである。
紅ではなく、色のない「白牡丹」であるのも、首への注目を無理なくさせる。また、白牡丹と首の「く」の音が重なって、音からも力強さとしなやかさが出ている。
虚子にも、よく知られた〈白牡丹といふといへども紅ほのか〉という白牡丹の本質を発見した句があるが、それに近い観察眼を感じる写生の佳句である。
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