樋口由紀子
ちちははの姿勢で渡る丸木橋
酒井麗水 (さかい・れいすい) 1942~
「ちちははの姿勢」とはしゃきっと背筋を伸ばした姿勢だろうか、それとも背を丸めた穏やかな姿勢だろうか。多分、前者であろう。丸木橋は一本の丸木を渡しただけの橋、安定性はない。心して渡らなければ川に落ちてしまう。丸木橋を渡るは人生を過ごすと同義であろう。そのように意識して生きてきたのだ。
「ちちはは」「丸木橋」と舞台設定はオーソドックスで、今の感覚からすると多少古めいているが安心して読むことができる。当時の女性が持っていた潜在的な意識をうまく表現し、父母に対する心の持ちようが感受できる。「橋」とは不思議なものだとあらためて思う。『橋を渡る』(吉田修一著)を読んでみたくなった。「魚」13号(1981年刊)収録。
●
0 件のコメント:
コメントを投稿