樋口由紀子
砂漠恋しや 画廊を抜けてゆく駱駝
草刈蒼之介 (くさかり・そうのすけ) 1913~1992
駱駝の絵を観ていたら、砂漠が恋しくなって駱駝が画廊を抜けていくのが見えたのだ。そう見えたのがまず可笑しく、そして切ない。駱駝が画廊を抜けていく姿が目に浮かぶ。駱駝はその図体の割にはおとなしい顔でかなしそうな目をしている。それは駱駝の決意なのか、勇気なのか。
メルヘンチックだがそれだけにとどまらないものを感じた。絵の中の駱駝に虚しさを見たのだろう。それは彼自身の中にもあるもので。わりきろうとしてもわりきれないものが生きていくなかには否応なくある。駱駝は了解を得たように駆け抜けていったのかもしれない。
時実新子は草刈蒼之介を「ニヒルで豪胆でそのくせ繊細な神経の青鬼」と評した。〈莫迦と違うのか俺と歩きけり〉〈きみは 夢屋か ぼくは ころし屋〉
蒼之助は私の祖父です。検索で偶然このブログにたどり着きました。この川柳は私も知らない作品ですが、いかにもあの祖父の詠みそうな内容ですね。
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