相子智恵
月涼し風船かづらふやしては 宇野恭子
句集『樹の花』(2016.07 ふらんす堂)より
風船かづらは夏になると時々、フェンスや窓辺で旺盛に育っている様子を見かける。ゴーヤなどと同じで、いわゆる「緑のカーテン」になるようだ。鬼灯に似た、ころんとした丸い形で、細い蔓をしゅるしゅると巻き付けて伸びる。
夏は、濃い緑色の葉の植物を見ることが多いだけに、薄緑色の風船かづらは、そこだけふわっと新緑のような柔らかさがあって、ほっとするような涼しさがある。
掲句、昼の暑さからようやく解放された夜空に、白く涼しげな月が浮かんでいる。そして月の光が作用して、ぽん、ぽん、ぽんと風船かづらが音を立てて殖えていくようだ。月光を反射し、ぼんやり光る丸い風船かづらは、まるで月の子どもたちのようである。
ロマンティックで、SFっぽくもある美しい句。
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