樋口由紀子
捨てられた靴のサイズは二十八
瀧村小奈生 (たきむら・こなお)
意外なところに意外なものがあれば驚きである。「捨てられた」だからゴミ集積所だろうか。たぶん履きつぶされている。使い古された靴ほど惨めなものはない。新品のときとはまったく違った様相になる。が、作者がびっくりしたのはそのサイズ。大きい。どんな人がこの靴を履いていたのかと思ったのだろう。
私事だが、息子の靴のサイズは二十八。それも小学六年の時から。だから、玄関に脱ぎ捨てられる(きちんと揃えない)でっかい靴に長年ほとほとうんざりしている。そして、二十八の靴を捨て続けてきた。びっくりさせていたのだ。
今ではわりとどこでも二十八の靴は買えるが、当時は、それも子ども用の、たとえば上履きなどはほとんどなく、探すのに苦労した。掲句を読んで、そんなことを思い出した。「川柳カード」第12号(2016年刊)収録。
0 件のコメント:
コメントを投稿