相子智恵
銀漢に祷り一つをたてまつる 藤木倶子
句集『星辰』(2016.07 文學の森)より
「思い」はぐるぐると、四方八方へ飛ぶものだが、「祈り」は真っすぐに頭上へ向かう印象がある。ここでは〈たてまつる〉があるから猶更だ。
頭上には天の川が太々と横に流れている。祈りは一本の縦の光となって天の川に到達し、一筋の支流が本流に注ぎ込まれるように、天の川と融合する。
そうした祈りの光をいくつも飲み込んで、天の川が人々の頭上を光り輝きつつ、滔々と流れてゆくところを想像してみる。その果てしなさ、神々しさにくらくらする。
掲句は一つの祈りを捧げる個人が主体の句だが、一つの切実な祈りが天の川の光と重なって、光による救済のような場面を想像させるのである。
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