樋口由紀子
ひたひたと秋の高さの川になり
透明花
朝夕はめっきり涼しくなって、秋の気配がただよう。秋はほっとする。暑さでばてていた身体が欠けていたものが戻ってくるように回復し、からからに乾いていた心も鎮まってくるのがわかる。
雲を見上げて、秋だと思うことはある。しかし、川はなかった。「秋の高さの川」がいい。まして水が澄むとかではなく、「高さ」。確かにそれはあると気づいた。こんなふうに秋を察知する。日照り続きで水位の下がった川の水嵩が徐々に増してくる光景は懐かしみと共に目に浮かんでくる。
「ひたひたと」もいい。映像的に捉えていて、時間的経過にリアリティーがあり、静かにそれでいて確実にやってくる。何ごともなかったように、いつもの秋になる。
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