樋口由紀子
渡された蛍に両手ふさがれる
熊谷冬鼓 (くまがい・とうこ) 1949~
蛍を手渡されたなら籠がなければ両手で受けるしかない。もう両手は他のことに使えない。それどころか開くことすらできない。両手は蛍に占有される。
だれに蛍を渡されたのか。蛍は何を告げているのか。ふさがれたのは両手よりも心の方ではなかったか。その後どうなったのか。などなど初夏の夜のできごとをいろいろと想像する。うしろの事情の方に関心がついいってしまうのが川柳の一般的な読みのような気がする。
〈花火と花火の合間に話し合えたこと〉〈折り返し地点で貰う紙コップ〉〈百円の傘にひゃくえんぶんの骨〉 『雨の日は』(2016年刊 東奥日報社)所収。
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