樋口由紀子
独り寝のムードランプがアホらしい
永田帆船 (ながた・はんせん) 1914~1996
就寝時につける小さい灯りを買ってきたのだろう。その商品名が「ムードランプ」だったのだろう。今だったら、こんなベタな名前はそうない。その当時は「ムード」という言葉が流行っていたのかもしれない。「独り寝」にはムードもへったくれもない。「ムードランプ」という命名を茶化している。
「アホらしい」の「らしい」は「の様子である」とか「の風である」とか、感じがするとか推量を表わす助動詞ではないだろう。ムードランプが壊れているとか、アホのように見えることではないと思う。関西弁の「アホらしい」で、あきれてしまっての「ばかばかしい。あほくさい」ということであろう。〈とある日の客が写楽に似ておかし〉〈スタイルにペーソスがあるチャップリン〉 『永田帆船句集』(1990年刊)所収。
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