樋口由紀子
夢を彫るには異論のない空だ
高橋白兎 (たかはし・はくと)
二月の空が好きだ。きりりとした冬晴れであり、春が近いと思わせる明るさがある。その澄んだ空に絵を描きたいと思ったことはあったかもしれないが、「彫る」という発想はまったくなかった。空を平面的にしか見ておらず、立体的には捉えていなかったからだろう。
「彫る」と言われて、のっぺりとした平面を越えて、どこまでも高く青い空がなにやら立体的に思えてくる。それも「夢を彫る」。それも「異論のない空」。言葉のチョイスにセンスを感じる。それぞれの言葉が互いに呼応しあい、豊かな味わいがある。均質化された言い方ではなく、このように空の美しさを表現した川柳があった。第28回川柳塔きゃらぼく忘年句会報(平成4年刊)収録。
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