樋口由紀子
乳のある方が表でございます
草地豊子 (くさち・とよこ) 1945~
一読して大笑いしてしまった。確かに「乳のある方が」おもてであり、まえである。まちがったことはなにも言っていない。でも、もっと他の言い方があるでしょう、よりにもよって「乳」なんて言葉を平気で使うなんて、ここまでよく言うわと感心した。でも、どんな問いをかけられたのだろうか。
「こんな恥ずかしい句はよう書かんわ」と作者に告げると、「恥ずかしがっているうちはいい川柳は書けへんわ」と笑って言われてしまった。私はまだまだ修行が足りず、どこかで恥ずかしがっていて、ええかっこして川柳を書いていると痛感させられる。インパクト抜群の川柳で、何度読んでも降参するしかない。〈文化の日「乳」という題ひねっている〉〈用もない乳が未だにぶら下がる〉 「杜人」(2016年冬号)収録。
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