2017年4月21日金曜日

●金曜日の川柳〔炭蔵正廣〕樋口由紀子



樋口由紀子






おかしいおかしいと行くゆるいカーブ

炭蔵正廣

私はかなりの方向音痴で、よく道に迷う。目的地に着けないこともたびたびある。もともと方向に自信がないので、途中でおかしいと思っても、それでどうすれがいいのか、その修正の方法がわからない。こっちは北だから、こう行けばいいとかがさっぱり見当がつかない。だから、おかしいと気づいてもただ前を行くしかない。

「ゆるいカーブ」が上手いと思った。カーブだからいままでの道は徐々の見えなくなる。急に見えなくなると一気に不安になるが、まだ振りかえることができる。しかし、すぐに見えなくなる。人生もそうかもしれない。おかしいとおかしいと思っても、そこを進むしかない。なんとかなると信じるしかない。でもおかしいというのはうすうす気づいている。〈画面から消したいカオがふたつある〉〈おそらくは開けたら笑う玉手箱〉〈散らかった数字の中に誕生日〉 「天守閣」(2016年刊)収録。

0 件のコメント:

コメントを投稿