相子智恵
玉葱の薄皮ほどの今朝の夢 長谷川 晃
句集『蝶を追ふ』(2017.05 邑書林)より
玉葱が夏の季語であることで、この句の背景が夏の朝であるとの連想が働く。夏の夜明けは早い。目が覚めて、まだ眠れるな…と二度寝した時に見た夢が〈今朝の夢〉だと想像される。
〈玉葱の薄皮ほどの〉によって、その短さ、儚さが質感として伝わってくる。薄いヴェールのような夢だ。夢の内容は思い出せないけれど、何か夢を見ていたことだけは覚えている……後にはそんな感覚しか残らないくらいのぼんやりとした夢なのだろう。
〈玉葱の薄皮ほどの〉が〈今朝の夢〉につながることの意外性と、それがすっと詩になったときの静かな快さ。
儚く寂しい、けれどもほの明るい朝の夢である。
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