2017年6月12日月曜日

●月曜日の一句〔高畑浩平〕相子智恵



相子智恵






大空へ早苗つぎつぎ投げ込めり  高畑浩平

句集『高畑浩平句集』(ふらんす堂 2017.05)

一読、気持ちのよい句だ。

田植えをする田に、苗の束を投げ込んで配る「苗打ち」の風景である。苗を下方の田んぼへ投げ込むのではなく、上方の〈青空へ〉としているので、できるだけ遠くへ投げようとしている様子が伝わってくる。また、空の青に放物線を描く早苗の緑の二色だけに焦点が絞られて、色彩も鮮やかだ。

勢いのよい〈つぎつぎ投げ込めり〉によって、田植えがはかどっている様子や、青空の下で田植えの人々の心が浮き立つ感じまで想像されてくる。

一つの物や動作に絞って描写することで、読者に周囲を想像させる、俳句という詩型の持ち味を最大限に生かしているような、印象明瞭な一句。

0 件のコメント:

コメントを投稿