相子智恵
大空へ早苗つぎつぎ投げ込めり 高畑浩平
句集『高畑浩平句集』(ふらんす堂 2017.05)
一読、気持ちのよい句だ。
田植えをする田に、苗の束を投げ込んで配る「苗打ち」の風景である。苗を下方の田んぼへ投げ込むのではなく、上方の〈青空へ〉としているので、できるだけ遠くへ投げようとしている様子が伝わってくる。また、空の青に放物線を描く早苗の緑の二色だけに焦点が絞られて、色彩も鮮やかだ。
勢いのよい〈つぎつぎ投げ込めり〉によって、田植えがはかどっている様子や、青空の下で田植えの人々の心が浮き立つ感じまで想像されてくる。
一つの物や動作に絞って描写することで、読者に周囲を想像させる、俳句という詩型の持ち味を最大限に生かしているような、印象明瞭な一句。
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