樋口由紀子
孫の写真に俺の顔が半分
福永清造 (ふくなが・せいぞう) 1906~1981
孫の写真を見ていたら、隅っこの方に自分も写っていた。顔の半分だけだったが、確かに俺。思いがけないものを見つけて、嬉しくなったのだろう。七五三とか入学式とか、なにか記念の時だろうか。そのころを思い出し、孫の成長と今よりも若かった自分を懐かしんでいる。日常のちょっとして喜びをうまく表現している。
自分の顔が半分しか写ってないのが不満というのではない。半分でも自分の顔が孫と一緒に写っていたことが何より嬉しいのだ。川柳が人生の哀歓を詠む文芸であると掲句を読んでつくづく思う。ほのぼのとした人間味が出て、現実感がある。合同句集『甍』(1972年刊)所収。
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