樋口由紀子
難儀とは女優の庭に生える草
柴田夕起子 (しばた・ゆきこ)
夏の草取りほど嫌な仕事はない。暑くて汗はふきでるし、虫は寄ってくるし、おまけに雨が降らないから土は硬くて抜きにくい。それなのに人の苦労も知らないで、どんどんずんずん伸びる。草のどこにその生命力があるのかと思う。
女優の庭に限らず、どこの家でも庭の草は難儀である。「女優」とは作者自身のことだろう。なにをもって「女優」と言っているのかは深く詮索してはいけない。「だって、私は女優なのだから、草取りなんてしないのよ」とおどけているのだ。自分の家の庭の草がぼうぼうになって困っていることを洒落て、ふざけて言っている。「難儀」という言葉に可笑しみがあり、「女優」という言葉にユーモアを感じる。「杜人」(2017年刊)収録。
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