2017年12月18日月曜日

●月曜日の一句〔友岡子郷〕相子智恵



相子智恵






雄ごころは檣(ほばしら)のごと暮れ易し  友岡子郷

句集『海の音』(朔出版 2017.09)所収

〈雄ごころ〉という万葉以来の言葉や〈檣(ほばしら)〉など、言葉の調べが美しく、格調が高い。

勇壮な雄々しい心は、まるで船のマストのようだという。いかにも男性的な象徴性のある中七までの力強さは、しかし冬の日が早々に暮れていく〈暮れ易し〉で、すっと哀愁に変わる。出だしが雄々しいからこそ、〈暮れ易し〉に回収されたときの寂しさが際立つ。

「ごとし」の句というのは観念の句ということになるだろうが、この句は〈檣〉と〈暮れ易し〉によって、冬の海辺の日暮れが脳裏に浮かんできて、「ごとし」の句でありながら風景句として、もの寂しい映像がくっきりと浮かんでくるのがとても美しい。

〈雄ごころ〉からの冬の夕暮れ、その残照。それはまるで老いのもつ透明な静けさや余韻のようでもある。

0 件のコメント:

コメントを投稿