樋口由紀子
夕暮れのキリンの首や象の鼻
松永千秋 (まつなが・ちあき) 1949~
人にも動物にもそれぞれ特徴がある。「キリンの首」や「象の鼻」は他の動物と比べて、特別で、どうしたって目立ってしまう。それは優性であり、長所だと私は思っていた。しかし、掲句を読んで、それは他の動物と違う部分を持って生きていかなければならない、生き難さなのかもしれないと思った。
もうすぐ日が落ちる。無事に一日が終わる。その束の間の夕暮れがキリンの首も象の鼻もすっぽり包みこんでくれる。夕暮れの優しさが長い首も長い鼻もみんなと同じように公平に、まるごとそのままを抱えこんでくれる。せつなくなった。せつなさには哀しみがある。せつなさも哀しさも優しさにつながり、愛である。そのようにキリンや象を見ている作者にじんときた。「川柳杜人」(2017年冬号)収録。
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