樋口由紀子
百メートル道路に平行しへんけい
二村典子
「平行しへんけい」の字面に停止した。「平行四辺形」と書くのがフツウなのに、視覚的効果抜群である。違う表情が見えたような気がした。「平行四辺形」は無理矢理押えられて歪んでいるみたいで、それでいて相対する辺は律儀にもそれぞれ互いに平行を保っている。以前からへんな形だと思っていた。
名古屋の二本と広島の一本が知られている戦災復興の都市計画に基づいて建設された「百メートル道路」に時空を超えて、そんな「平行しへんけい」がずっと横たわっているのか。あるいは「百メートル道路に平行し、へんけい(変形)」と読み、「百メートル道路」の歴史的意味合いをひっかけて、ゆがみを表出しているか。読みは広がっていく。〈土星は水に浮かばないない〉<一体全体ほうれんそうゆでたてで〉<かきつばた角と隅とがかきづらい〉 どの句も抒情は置き去りにしていて、かっこいい。「川柳ねじまき#4」(2018年刊)収録。
0 件のコメント:
コメントを投稿