樋口由紀子
座布団を頭にのせて待っている
守田啓子 (もりた・けいこ) 1961~
その姿を想像して吹きだしてしまった。なぜそんな恰好をして待っているのか。何か理由がありそうな気もするが、待つ以外に何もすることがないから、なにも手につかないから、ただそうしているだけのような気がする。誰を待っているのか。きっととても会いたい人に違いない。約束の時間はまだまだ先なのに、そのずっと以前から、早く来い、まだ来ないのかといらいらしている。いらいらしているだけならまだいいが、あろうことか、頭には座布団をのせている。
ユーモアのあるおおらかな川柳で人物が滑稽に浮かびあがる。待たれていた人もその姿を見て、びっくりするだろう。帰ってしまうかもしれない。人間って、おかしいし、面白いし、かわいい。川柳「杜人」(2017年刊)収録。
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