樋口由紀子
お辞儀する道に落ちてる詩と金魚
村山浩吉(むらやま・こうきち)
挨拶、お礼、遠慮、辞退、などの理由で頭を下げた。すると、落ちているものがあった。それが「詩と金魚」。わかりやすい地点に着地しないで、意味の理屈をはぐらかしている。上から下へ読んできて、最後にあれっというポイントを持ってきているのだが、へんだと思うまでに微妙な時間がかかった。
「詩と金魚」の並びにびっくりした。どちらの言葉もふくらみと広がりがあるが、質感と触感はまったく違う。理想と現実なのだろうか。「詩」は詩集とか具体的なものというよりは、日常とはまた別次元の、夢のある、想像力の次元のもののような気がする。金魚は死んでなどいなくて、真っ赤でピチピチ跳ねていて、新しいなにかを象徴しているものと思いたいがそうでないのが現実のようだ。「おかじょうき」(2018年刊)収録。
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